2023/04/04
帯は短く
Eroneous Zone(エロウ二アス・ゾーン) という言葉があります。
アメリカの心理学者ウェイン・ダイアー博士の本のタイトルです。今は亡き、上智大学の渡辺昇一教授が「錯信帯」(さくしんたい)と言う言葉に訳しておられますが、とても興味があるので深掘りしてみました。なにせ、辞書にも載っていない単語です。話を聞きたい両先生もこの世におられませんし、残念ながら、錯信帯という概念も、その後は途絶えています。
『無形の力・インタンジブルが会社を変える』(PHP研究所 2013年刊)では、この考え方を私なりにとらえて紹介していますので参考にしてください。
エロウ二アス・ゾーンとは間違った情報や、思い込みに振り回されて、思い迷い、悩む「領域」のことを言いますが、今回は渡辺教授がせっかく「Zone」に「帯」という訳語を使っておられるので、領域を帯の長さという概念に置き換えてみました。
人間の行動パターンを大きく2つに分けて考えてみましょう。
帯の長い人
1 やりたいことに対し、思い込みや、先入観が邪魔をして、実際はやれること、出来ることを行動に移さず、戸惑い悩む心の癖
2 みずからの否定的な考えに自分自身が振り回される癖
3 失敗を恐れ、躊躇して行動を先延ばしにする
4 過去に対し嘆き、後悔ばかりする
5 起きてもいない未来のことを、あれこれ考えすぎる
6 他人を気にしすぎて、自分の意見を主張しないので、他人に振り回される
7 神経質に考えすぎて、強いストレスを感じる
「今年は家族でハワイ旅行をしよう。子供も喜ぶだろう。いや、待て、お金もかかるし、来年と言うこともあるし、やっぱりやめておこう」
「今日の会議ではあの件について、自分の調べ上げた結果を発表する。でも、部長がきっと難癖をつけるだろう。だから、やっぱり黙っておいた方が無難」
「介護の必要な母を手元で面倒見ておけばよかった。僕の心を後悔で一生苦しめるだろう」
帯の短い人
1 意思決定が早く、素早く行動に移す
2 今という時を大切にする
3 未来に起きることはその時に受け入れ、処理する覚悟をもっている
4 成功するためには失敗をいとわない
5 過去に起きたことは済んでしまったことと割り切り、後悔しない
「ああ、ハワイか、今年行かなかったら、来年何が起きるかわからない。行くぞー」
「あくまで私の調べた結果を発表します。検討はご随意にしてください」
「お母さん、できる範囲で介護するので、僕の所においで!」
錯信帯が長くて苦しむのは、無駄なことです。やさしい人、控えめな人がこのタイプに多いと思います。他者をおもんばかりすぎ、我慢しすぎなのではないでしょうか。他人を気にせず、少しずつ、自分中心に考えて行動する必要があると思います。
このような考え方からも、少し自分が見えてきたのではないでしょうか。案外、みずからが自分を傷めつけ、追い込んで生きづらくしているのです。外部に理由があると思い込んだり、人のせいにして、批評をする前に、自分の中に答えを見つけましょう。
ビジネスにおいては、なおさら「帯」の長短は、きわめて大切です。錯信帯が長い企業は生き残れません。
いったん組織に組み込まれると、組織の理論ばかりが優先され、個人のオピニオンなど主張しようものなら、たちまち出る杭は打たれて、平均的な社員になっていきます。とりあえず、目先の給料がもらえればそれでよいという価値観が企業風土として根付いていきます。こういう致命的な欠陥に目をつぶり、「いまさら、もう遅い」と改革をしぶる企業は「帯」が伸びきっているのです。
どうせやっても駄目だ →やってみないとわからない
人がしていることをしたほうが無難だ→人がしていないことにはチャンスがある
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