2023/06/01
一寸法師のダイアモンド
一寸法師は小さなダイアモンドを持っていました。あまりに小さいので、持っていることも忘れ、価値も知らず、鑑定に出したこともありませんでした。ダイアモンドはCarat(カラット=重さ)、Cut(カット=輝き)、Color(カラー=色)、Clarity(クラリティ―=透明度)の4Cで評価されるのですが、お椀の底に眠っていたので、M&Aのその日までとりだして眺めたこともありませんでした。
小さいダイアはキラキラ輝き、透明度は高く、粒が大きなダイアモンドより、はるかに貴重な価値があったのです。M&Aで学んだことは、企業はダイアモンドと同じで、単にその大きさだけで価値は決められないということでした。
さて、企業の価値とはいったい何か。手に取ることのできるダイアモンド自体はタンジブル「有形資産」そのもの。感動、喜び、満足を与えるその光、輝きこそがインタンジブル「無形資産」で、これがしっかりしていなければ買う意味がありません。
経営は理論や知識だけですむものではありません。人間に仕事をしてもらい、人間に物を売るのです。心を動かすのにトップにビジョンがなければ羅針盤のない船を動かすようなもの。徹頭徹尾、ビジョンを企業内で共有していること、それがあるから全員に方向性が見え、創造性が発揮でき、オリジナリティーが生みだせ、職場文化も醸成し、自信をもって市場に漕ぎ出せるのです。無形の価値は見えないところで全部つながっています。花の元素のようにどれも大切です。(参照、花が美しいのには訳がある)
経営には左脳(理)と右脳(情)の両方が必要です。もし、あなたが起業するならば、1人の人間がすべてに秀でているとは限らず、むしろそんなスーパーマンはいないと心得ておいたほうがが良いでしょう。自分の不得意な分野を任せる人材を確保し、活躍してもらう必要があります。まことにうまくできたカップルで、主人が左脳、私は完全に右脳人間。世の中には本当に素晴らしい特技や才能を持った人が多いと知りました。その人たちに助けられ、調子に乗ってお椀をひっくり返しそうになると主人やみんなが元に戻してくれました。
ああ、経営は楽しい!みんなと能力を出し合い、結び付き、ビジョンをひとつにし、可能性に向かって舟を漕ぐのです。資金がたんまりあっても、ビジョンがなければ無人島に漂着し、いつ来るともわからない迎えの舟を延々と待つことになる。ビジョンはトップだけが持っていてもだめ。全員が持たなければパワーになりません。「何を価値あるものとして仕事をするのか」「どのような価値をお客さまに届けるのか」1日1回、10秒でいいから、みんなで反復することを忘れないでください。
M&Aを決断したのがお正月明けの2月。デューディリジェンスが無事に終わり、秋の深まった10月には新社長を迎えることができたのです。これは、あまり例のない猛スピードで、周囲から驚かれました。
「この価値(ビジョン)を掲げ、あの島を目指す(オブジェクティブ)」がしっかりしていれば、島に着くまでの航海(プロセス)は、凪いでも、揺れても怖がらないで!どんな船もお天気に左右されるし、なにが起こるかもしれません。人生も同じではありませんか?それを乗り越えるのが経営です。
企業を目指す人、いま実際に現場で活躍している人も「一寸法師のお椀の舟だって島に着いた」を励みにしてください。
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