「信用と信頼」は機関車の燃料

「鍵は正直者のためだけにある。留守にするとき、ドアに鍵をかけるのは正直者が中に入らぬようにするためにある。悪人はかかっていようがいまいが、どっちみち入る。もしドアが開いていれば正直者でも誘惑に駆られて入ってしまうかもしれない。鍵をかけるのは正直者に悪いことをさせないためである」とは、ユダヤの聖典タルムードの一節です。

この警句は、人間にとって「信用と信頼」がどのようなものか深く考えさせます。どこか親鸞聖人の悪人正機説(しょうきせつ)の考え方に似ているように思えます。すべての人間を根源的に、おおきな枠の中で捉えています。善人も悪人も、正直者も、そうでない者も大差ないということでしょうか。

この「信用と信頼」問題を、さまざまな角度から眺めてみることにしましょう。

結婚の相手を選ぶのは相手のやさしさや、愛情の深さより「信頼、信用できる人であるかどうか」だと思います。毎日いっしょに生活するベースにこれがなかったら、愛さえ育ちません。前回の「責任」と並んで「信用と信頼」は人生を、仕事を支えるインタンジブルなパワーの中でもトップクラスに位置します。

たとえれば「責任」を屋根とすれば「信用と信頼」は柱のような関係です。この2つのあいだで社会や、仕事、家庭が成り立っています。重い屋根を、折れそうになっても辛うじて支えている柱、そのように想像してみて下さい。この2つのインタンジブルパワーは切っても切り離せない関係です。

「信用と信頼」は機関車の燃料のような役目を果たします。機関車は燃料を燃やし、貨車をひっぱります。貨車とは、経営者にとっては、会社であり、取引先であり、社員であったり、個人生活においては、家族、友だち、知人、近隣の人であったり。あなたが燃やす石炭=「信用と信頼」が、よい質であれば、貨車はあなたに牽引され、いっしょに走りますが、質が悪ければ、大量の煤(すす)を吐き、貨車は止まってしまいます。気が付けば、何も、誰も付いてこなかったという羽目になるでしょう。それが崩れた時は、元に戻るというわけにはいきません。孤独のどん底で再起不能となり、大切なものすべてを失うでしょう。

シェイクスピアの「オセロ」はこれを取り上げた不滅の文学です。オセロがいちばん信用していたキャシオに妻デズデモーナのハンカチを浮気の証拠にでっち上げられ、愛する妻を信用できずに殺します。キャシオの罠にはまったと気づいたオセロは妻の横で自害します。「信用と信頼」ほど、古今東西、文学の題材として取り上げられるインタンジブルパワーはありません。人間を牽引する最も強烈な機関車の燃料です。
機関車
「信用とは何か」「信頼とは何か」、私がいちばん大切にしている課題です。じつは「信用と信頼」というペアは、ほんとうは別々の燃料なのです。次回にその理由をくわしく説明したいと思います。このペアを使い分けることによって、明確な視野が広がっていくのを実感することでしょう。

手に入れたい良質の石炭、みずからが掘り当てて、せっせとくべながら、経営、人生というレールの上であなたが目指す「安住という名の駅」で無事下車するまで、燃やし続けて頂けたらと願っています。


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責任は、重い、軽いでなく「果たすもの」

社長さんは可哀そう。私もかつてはそうでした!自らの意志で社長を目指した人も、ならざるを得なかった人も、高い報酬を得るのはなぜかを、社長業につく前に考えておいたほうが良いですね。

社長の報酬は、問題を解決するため、「責任を果たす」ために支払われるものです。私も日々、そのために奔走していました。そのためには、経営者はアクションリーダーでなければ、机上で号令をかけるだけではすみません。「現場と距離が広がる=背中のリュックが重くなる」を心に留めておいてください。

どんな立派な会社でも不祥事は起こるし、危機にも遭遇します。そのためには責任問題を起こしづらい職場の環境づくりが大切です。

私は、ディスクロージャーが好きでした。社長室のドアは開けっぱなし、常にみられてもいい状態、いつでもだれでもが気軽に入りやすい雰囲気を心がけました。ヒソヒソ、コソコソするのは悪がひそんでいるからです。男性が気にする面子(メンツ)これも経営には邪魔です。そんなものに何ほどの価値があるでしょう。かなぐり捨てて、捨て身で取り組む姿勢を貫くなら心身ともに楽でいられます。

私は、世間知らずのお嬢さん社長でしたから、経験や学びから何も身に着けていませんでしたので、何か起こったら、迷うことなく公的機関、信頼できる第三者機関に飛び込んでいました。無邪気も策のひとつです。
税務署に「署長さん、何か良い節税の方法ありませんか」と相談に行っていました。

「一生懸命儲けて、納税すればいいじゃないですか、節税のために、時間や、頭を悩ますのは無駄ですよ」さすが署長さんは頭がいい返事を下さいました。それで、私もその意見に素直に従いました。署長も署長なら、私も私!

一方で、社員の小さな変化を見逃さないように気をつけていました。小さな変化は大きな問題がひそむ兆し。これは「正解」なのですよ。笑い事ではありません。家庭においても言えることですね。あなたも感じたことがある?

現場にはしょっちゅう足を運んでいました。組織はできるだけスリムにしていました。訳の分からない名刺の役職名もなしでした。部下の本音を聞くための「お酒の場」など論外です。できる限りの断捨離ムードの職場でした。

人間の言動には必ず、動機や理由が存在します。表面(タンジブル)だけでなく裏(インタンジブル)にも注目することです。会議の発言、報告書なども、単純にとらえないで「どうしてこういう意見を言うのだろう」とその背景も察する必要もあります。

「信じて疑う」という言葉は実にニュアンスにあふれています。社長という職分はこうした微妙な嗅覚も、持っていなければなりません。

会社のシステム上の課題をはじめ、上下のコミュニケーション、社員のモラルや資質などにも注意して目を向けることが必要です。問題が起こったとき、時間をかけないで取り組む、口実を言わない、他人を批判しない。第一、そんなことをしている暇があろうはずがありません。

「知らなかった」「残念です」「これから気を付けます」これは意味不明な、責任を果たすことから逃げて、テレビニュースで頭を下げる人の哀れな姿です。おわびて済ませるのも、それを許すのも、双方に責任があります。
まして、責任を果たす=辞めるなどはとんでもなく卑怯なことです。解決に取り組む期間は役職を放棄できない期間でもあります。終息しそれを公表できるまで、最前線に立って問題解決に取り組む姿勢があれば社員は協力してくれます。
天秤のコピー
社長が毎月の社長報酬をいただくには・・
他のだれよりも冷静に現実を直視する勇気と目
他のだれが諦めても最後まで問題を解決しようとする強い精神力

経営者もかつては教育費やローンのために苦しい思いをした30代40代を思い出し、貴重な収入を味わい、汗と涙を流し、二度と起こらないように改善策を打ち、世間様に堂々と事後策を公表し、もいちど、掲げたビジョンに立ち返ることを心に描いて、がんばる。

会社がしでかした事件、従業員が起こした問題、すべてにおいて責任を持つのだから、割に合わないと思うけれど、社長業にのしかかる責任の重大さの認識欠如こそ「責任を果たしていない」と言えます。

「何で社長になったのや?」
「夢見ていたことと大違いやないか?」
「だからいったじゃない!」
「迷うなら、登るな、登るなら、下山まで」・・
山登りが好きなあなたに贈る言葉です。

「赤ランプ」言われて気が付きスイッチ・オフ

会社の各部門、それぞれが大変な使命を負っていて、一か所が滞っても他部門に影響します。トップは赤ランプが付かないように全体を俯瞰(ふかん)していなければなりません。

私が経営していたとき常に意識してこまかくウオッチしていたのは最も遠く離れている倉庫、在庫管理部門です。他の部門に先駆けて社内に警告を発してくれるセンサーなのです。在庫は資産です。倉庫は、現物に姿を変えてお金が眠っているところ。この足の裏ともいうべき部門をちょっと押せば会社の他の部門の問題点が浮き上がり、健康状態が把握できることを知っていると良いでしょう。

適正在庫がストックされていて、営業や販売部門とシンクロしているか、健康な商品は倉庫で健康的な良い呼吸をしているはず。社内の血行をうながして、良い酸素を供給するには、末端の血流が大切です。

ここにデスクを持ち込めば、売れ筋も把握でき、マーケットの逆探知さえできます。私は、市場調査は倉庫から出来ると思っていました。倉庫には、在庫をチェックして販売施策を現場で考えるスタッフがいてもいいと思います。営業は商品と対面し、デッドストックを再生させる方法も考えられます。ここにデスクを置いてもいいくらいです。

ああ、そうそう、私はデッドストックという言葉が大嫌いなのです。この言葉が、まさに商品を殺しています。かつては売れ筋だったのに、時代の趨勢(すうせい)でそうならざるを得なくなった商品を「ノンランニング・ストック」と呼べばランニングさせる方法が考えられる。デッドと言ってしまえば再生できません。自分でいうのも何ですが、私は再生の名人でした。商品を活性化する施策はいくらでもあります。倉庫はまさにニッチ・ビジネスを掘り起こす特殊部門と言っても大げさではありません。ニッチに目を付ける人は右脳をよく使います。

最近はロジスティックスが進化して、物流が大型化され、本社とはますます距離が広がったので、よけいに用心が必要です。大きな企業では、過剰なストックは燃やす、埋めて処理するのが一般的と聞いてびっくりしました。タンジブルな商品はこんな目にも遭うのでしょうか。商品に対する愛の枯渇でしょうか。

社員が多くなり、事業が大きくなると、社長は倉庫には入らなくなります。コンピュータと社員の報告があれば経営状態がちゃんと見えていると単純に思いこんでいるなら、大きくはき違えています。コンピュータは基本的に過去の数字の集積、営業からは都合のいい報告もあります。机の上から見えるのは実態とかけ離れていることが多いようです。たまには変装してでもいいから、倉庫見学も必要ですよ。

あなただって同じことです。ああ、太った、痩せたとつぶやきながら、ジムに通ったり、便秘薬を飲んでいるけれど、実際、必要以上に食べ物を胃に調達していないか、過剰にため込んでいないか適正な量を調節しなければなりませんね。腸が悲鳴を上げないように、下腹の見学をしてください。
お腹の倉庫「赤ランプ」言われて気が付きスイッチ・オフ

プロフィール

山川 和子

Author:山川 和子
世界的ブランド「フェイラー」創業者 山川和子が起業家になりたいあなたへ「私の経験」から語れることをお伝えしましょう。

ビジネス成功へのキーワード「インタンジブル」(無形の力)を使って理論的、かつ実践的に学び、「成熟した人格」「感動的な人生を送るための手腕」「文化的な富裕」を同時に身に着けられることでしょう。

  <独ホーエンベルク>
YSH山川高齢者施設財団
「住みよい街」ホーエンベルク財団

日独で執筆&講演活動中 

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